アフリカビジネスパートナーズ

2014/01/20

アフリカビジネスに関わる日本企業

キーワード:アフリカ関連企業・ビジネスの動向, アフリカビジネスパートナーズ

アフリカに日本企業の姿が戻りつつある。

政情不安や日本のODA政策の転換、経済低迷などにより相次ぎアフリカから拠点を撤退させた日本企業が、近年投資を再開している。従来からの資源、インフラ、自動車といった業種のみならず、通信・ITサービス、機械・部品など産業財、消費財といった新しい業界からの参入も増えつつある。

外務省の海外在留邦人数調査統計によると、調査を開始した2005年には336拠点であったアフリカにおける日本企業の現地法人、駐在事務所、支店数の合計値は、2011年には562拠点と約1.7倍となった。

日本企業が積極姿勢に転じた背景

アフリカでの事業展開を検討する企業の規模やグローバル度は一様ではない。経済成長が続き、海外からの投資が活発化しているアフリカ市場は、グローバル展開を行う企業にとってみれば、シェア逸失を避けるためには競争戦略上参入しないという選択肢はない市場である。一方で、弊社には、はじめて海外事業を行うという企業からの問い合わせも多い。国内市場や大手取引先を見ていれば「なんとかなった」ビジネスモデルが、日本においてとうとう限界を迎えつつあるのだ。起死回生の策として新規市場を求めた結果、すでに競争環境が激化しているアジアを避け、まだ勝負の余地が残されているアフリカに着目するという動きがみられる。

欧米などの海外の企業は一足早く2000年代前半から積極姿勢に転じている。サブサハラアフリカへの外国直接投資額は、2000年に97億ドルだったものが2008年には578億ドルにまで増えている。政治的安定・紛争の減少、ガバナンスの改善を背景に、2002年以降の資源高が投資を活発化した。人口の増加と都市化が、インフラや通信、小売、サービス、金融など、消費の拡大が見込める事業への投資を促した。投資はさらに都市に経済力をもった人口を増加させ、内需の拡大につながった。アフリカには現在、人口100万人以上の都市が50もある。ネスレ、ダノン、コカコーラ、ケンタッキー、ロレアル、P&G、サムスン、ボーダフォン、IBM、マイクロソフトといった企業は、都市部において大掛かりな投資とブランド構築を行なっている。

日本企業のアフリカ進出の実態

「日本企業のアフリカへの姿勢は消極的で、アフリカビジネスを行なっている企業は極めて限られている」とはよく耳にする話だが、実際にどの程度の企業がアフリカビジネスに関わっているのか、広範に調べたデータはいままで存在しなかった。アフリカビジネスパートナーズはアフリカ開発銀行の委託の元、アフリカに関連して事業を行なっている日本企業のデータベース化を進めている。現在385社が名を連ねており(取引関係のみも含む)、約1,500~2.000社と言われる中国をはじめとする諸外国には遠く及ばないものの、意外と多くの企業がアフリカで事業を行なっていること、その業種や事業形態も多様であることが、このデータベースからはわかる。以下いくつか事例をご紹介する。

【データベース】アフリカビジネスに関わる日本企業リスト(日本語・2014年1月版)(PDF)

 

・食品、日用品といった消費財のアフリカでの製造・販売

アフリカの拡大する内需を見込んで、消費財企業が動いている。ナイジェリアで90年代からリパック工場を運営する味の素は、エジプト、コートジボワール、カメルーンと戦線を拡大している。2015年度からはナイジェリアにて、東洋水産との合弁企業により即席麺の生産・販売を行うことも発表している。即席麺といえば、2013年にはサンヨー食品がナイジェリアで現地企業に出資することで即席麺市場に参入、日清食品がケニアでケニア向け即席麺の販売を開始した。

長年エジプトで家電を製造・販売し、洗濯機で6~7割のシェアを持つといわれる東芝は、2011年液晶テレビの製造・販売を開始した。シャープもエジプトで、エアコンに続き2014年には冷蔵庫の製造に乗り出している。川商フーズはガーナとナイジェリアでサバ缶を年間40万個売り、パナソニックは年間1億個の乾電池をタンザニアで製造している。

また、最終商品の販売ではないが、化学メーカーのカネカはアフリカ広域に及び、現地企業向けにウィッグ(かつら)の材料となる合成繊維を販売している。アフリカの女性のウィッグ、エクステンション(つけ毛)装着率は6割とも言われ、今後経済力を持つ人口が増えるにつれて市場の拡大が見込める。

・通信、ITサービスへの設備納入・参入、オフショア発注

アフリカにおいて携帯電話は2006年以降爆発的に普及し、いまや人口の半数以上が持つ。周辺に海底ケーブルも張り巡らされ、それらにともなう通信設備需要は高く、NEC、京セラ、日立製作所、富士通といった企業がアフリカで通信設備を販売している。

中古車販売サイトを運営するカービューは、ケニアに法人を設立した。増加するサイト経由の中古車取引を取り込む。楽天が買収したkobo社は、南アフリカで電子書籍事業を開始した。インターネットサービスにおける先進国とアフリカの時差はほぼなくなっているといってよいところまで来ている。IT技術を持つ人材や通信関連事業の裾野の拡大も目覚ましく、国土全域に光ケーブルが張り巡らされているルワンダの企業を相手に、ソフト開発のオフショア発注を行なっている日本企業もある。

・機械、機器、設備、部品などの産業財メーカーのアフリカ製造業企業への納入

パン製造機、即席麺の製麺機、食品包装機器といった食品工場用機械や、給油所機器、キャッシュレジスター、計量機器、検査機器といった産業用機械・機器・設備を製造しているメーカーが、アフリカ企業への製品納入を行なっている。営業コストをかけづらい中小企業である場合も多いが、きっかけはアフリカ企業から直接ホームページを通して引き合いがあったことだという話もよく聞く。工場設備は納入にあたってトレーニングやメンテナンスを必要とするものも多いため、何度かアフリカに渡ることになり、その技術供与がさらに発注や引き合いを増加させ事業が拡大しているという企業もある。アフリカでは産業財メーカーが発達していないため外から輸入することになるが、中国やアジアでなく日本企業に引き合いがくるのが興味深い。南アフリカ向けには医療機器や検査機器、制御機器など、機能の高さが必要とされる製品の納入もある。

・アフリカ現地企業に対するM&Aの活発化

NTTは南アフリカの大手システム会社Dimension Dataを買収しアフリカに拠点を得た。関西ペイントは大手塗料会社Freeworld Coatingsを完全子会社化した。M&Aの実行は、アフリカに買収可能な規模と透明性を持つ企業が存在していることを示している。

長年に渡りアフリカに根を張り事業を行なってきた豊田通商は、2012年、仏大手商社CFAOを子会社化した。CFAOは西・中央アフリカを中心とする32カ国で自動車、医薬品、飲料などのネットワークを持っており、豊田通商が持つ東・南部アフリカを中心とする25カ国とあわせると、アフリカ大陸ほぼ一帯に事業基盤を持つ日本の商社がアフリカに登場したこととなる。

・日本の技術力を生かしたインフラ投資

日本の競争力を生かしたインフラ投資が結実しつつある。双日は2012年、スペイン水事業大手Abengoa Water社と共同でガーナにおいて海水淡水化事業に参画すると発表した。タービン・発電機製造で日本企業が世界約8割のシェアを持つとされる地熱発電においては、豊田通商が現代エンジニアリングとともにケニアでプロジェクトを受注している(東芝がタービン、発電機を製造)。東芝はエジプトで地下鉄、南アフリカで鉄鉱石運搬用電気機関車を受注・製造している。東洋エンジニアリングはナイジェリアにて、肥料プラントのライセンス供与、基本設計といった上流を受注。NECの指紋認証技術は南アフリカにおいて、全国民が使用する国民IDシステムとして使われている。

アフリカビジネスパートナーズwebサイト:http://abp.co.jp/